■「カルシウムを摂りすぎると、結石になりやすいのでしょうか?」
というご趣旨のお問い合わせをよくいただきます。結石の多くはカルシウムを多量に含んでいますので、そのようにお考えの方もいらっしゃるようです。しかし結論から申し上げますと、
「結石はカルシウムの摂りすぎより、不足のほうが出来やすい」
■結石(特に尿路結石)はどのようにして出来るのでしょう?
(1)カルシウムは尿の中でも、血液の中でも、溶けた状態であります。ところがある条件の下では、沈殿しやすくなり、目に見えるような沈殿として固まります。これが結石です。
尿の中でカルシウムが沈殿するためには、
※カルシウムが尿の中にたくさん出てきて、濃度が高まること。
※尿のphがアルカリ性(通常はかなり強い酸性)になること。
という基本的な二つの条件が必要です。
(2)カルシウムをたくさん摂取したからと言って、それがそのまま尿に出てくるわけではありません。カルシウムが実際に体内に吸収される量は一日せいぜい4~300mg程度です。
しかし骨に含まれるカルシウムは約1kg(1,000,000mg)。
結石ができる場合、そこに含まれるカルシウムは桁違いに大量にある骨のカルシウムが溶け出たものなのです。
(3)カルシウムの摂取が不足しますと、血液中のカルシウムが不足することになります。これを防ぐため、骨からカルシウムを溶かし出し、カルシウムの量を元に戻そうとします。この時に必要以上の余分なカルシウムも溶け出してしまうのです。
この余分なカルシウムは様々な悪さをしでかし、多くの成人病の原因になってしまうのですが、結石もそのうちの一つなのです。
(4)骨からカルシウムを取り出すためには、「副甲状腺ホルモン」が分泌されなければなりませんが、このホルモンは尿を酸性からアルカリ性にしてしまう働きもします。
このように、カルシウムの摂取不足は血液中のカルシウムの量を増加させ、尿のカルシウム濃度を高めてしまうとともに、尿をアルカリ性にしてしまう、という二重の原因となってしまうのです。
■ほうれん草などに多く含まれる「シュウ酸」という物質があります。カルシウムと非常に相性が良く、すぐ結合してしまいます。このシュウ酸がそのまま体内に吸収されますと尿の中でカルシウムと結合しようとします。
これも結石の大きな原因の一つになります。ですから一度結石を患った方は「ほうれん草」をあまり食べないように指導を受ける場合もあるそうです。ところがカルシウムを十二分に摂取していますと「シュウ酸」が吸収される前に腸の中でカルシウムと結合してしまい、そのまま便と一緒に排泄されてしまいます。
これも結石予防の一つです。
■結石の原因は様々で、この説明はほんの一例に過ぎず、また極めて単純化したものです。実際はもっと複雑で多くの要因が絡み合っています。
しかしカルシウムの摂取不足はそれらに共通する原因なのです。
「カルシウムの摂りすぎが結石の原因になるのではないか」と誤解してカルシウムの摂取を制限したりしないようにしたいものです。